信楽焼 火と土と灰

「信楽焼のイメージはあるけど、実際あまり見たことはない」

という方は多くいると思います。

今や古来の製法である穴窯の信楽焼をする人が少なくなっているので、一般に目にする機会は少なくなっていると思います。

その信楽焼の特徴について語ることで、信楽焼の見方や楽しみ方を伝えられたらと思います。

ご存じのとおり信楽焼といえば、荒目の土肌に緋色の発色、長石の吹き出しです。そして穴窯特有の自然釉による窯変がみられます。

創られる視点から観ていきます。

まず粘土ですが、もともとは山の土です。

それを精製して焼き物用の粘土となっています。

つまり掘ってくる場所によって微妙に成分が変わってきます。

ですので、微妙な肌合いや緋色の出方が変わってきます。

そこで自分に合った肌合い、自分の焼成に合った焼き色の土を探します。

これがなかなか大変です。焼いてみないと判らないので、試す手間がかかるのです。

基本的には信楽焼に使われる土は白土です。

その方が緋色が発色した際に火色らしいよい色がでるからです。

火が直接周って来ない所は白っぽい土色です。

次に焼成です。

窯の口に薪を入れていきます。

始めは少し離して本数も絞って、温度を上げていきます。

といっても序盤ですでに見た目は巨大バーナーのごとく炎がでています。

高温になると薪の本数も増やし、爆発的に燃焼します。

白い土が炎に包まれ、窯の中で変化してゆきます。

温度の低いときに、土に火が周り煤がつきます。作品が煤で真っ黒になります。

それが溶けると緋色が発色するのです。

そこにさらに煤が乗ると窯変になり緑の色がみえてきます。

火が直接勢いよく当たるところは一面きれいなグリーンの自然釉となります。

薪の灰がじかに触れているところはより変化が激しいです。灰が変化していくのですが、温度が低いため変化途中の様々な色がみられます。

灰の質感も少し残ったりするので穴窯の最もみどころとなるところです。

窯全体でこのような事が起こり信楽焼ができてきます。

穴窯の特に信楽焼のよいところは強いパワーを感じることですが、それは緋色という色合いと、炎が焼き物の間を何度も駆け巡り、強い還元、酸化、温度ムラを発生させ高温下で何度も少しづつ灰を飛ばし、力強くも素朴な風合いの焼き色を発生させるからです。

さらに、そこに乗る自然釉、つまり溶けた灰がアクセントとなります。

溶けた灰の色は温度、還元度合い、灰の量により黄緑、マットなグリーン、白、青みがかったグリーン、灰色、青みがかった黒と条件によって様々な色をみせます。

こうした細部も魅力ですし、全体の自然なパワーも感じとってもらえたらと思います。

ちなみに、私のひとつのお勧めは淡い緋色だったりします。

器の話になりますが、淡い緋色は濡れ色になると、なんともいえない素朴でありながら暖かな良い風合いがでてきます。

地味ですが使うと満足度が高いので、気に留めておいてはどうでしょうか。